大判例

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東京高等裁判所 昭和27年(行ナ)42号 判決

原告 花山直康

被告 特許庁長官

一、主  文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は、原告の負担とする。

二、事  実

第一請求の趣旨

原告訴訟代理人は、昭和二十七年抗告審判第五七号事件について特許庁が、昭和二十七年十月二十七日になした審決を取り消す。訴訟費用は、被告の負担とするとの判決を求めると申し立てた。

第二請求の原因

原告訴訟代理人は、請求の原因として、次のように述べた。

一、原告は、普通活字体程度の態様で、「LUCKY PAZZLE」の英文字を記し、その上部に片仮名で「ラツキーパズル」の文字を左横記してなる原告の商標につき、指定商品を第六五類玩具及び運動遊戯具として、昭和二十六年七月四日その登録を出願したところ、(昭和二十六年商標登録願第一三七四九号)拒絶査定を受けたので、昭和二十七年一月十八日抗告審判の請求をなしたが、(昭和二十七年抗告審判第五七号)特許庁は昭和二十七年十月二十七日「本件抗告審判の請求は、成り立たない。」旨の審決をなし、右審決書謄本は、同年十一月六日原告に送達された。

二、右審決の理由は、原告の商標を前記のように認定した上、原査定が引用した登録第三五一四〇〇号の商標は、普通活字体のような態様で頭字を大きく「Lucky」の英文字を記し、その下部に片仮名で「ラツキー」の振仮名を左横記してなるもので、第六五類玩具及び運動遊戯具を指定商品として、昭和十六年九月一日出願、昭和十七年四月九日登録されたものであると認定し、次いで右両商標は、外観からは、類似範囲を脱しているが、称呼及び観念から見ると、原告の商標中の一部「PUZZLE」(パズル)の英語を和訳すれば、謎、思惑等の意義の外、考えもの的に工作されたもの(玩具及び遊戯具として、考えもの的に工作されたものを含む。)を指称することは明らかである。しかも今日では、原告の商標の指定商品の一種である。考えもの的に工作された玩具及び遊戯具には、日本語と同様に、その用途を表示する慣用の商品名称として普通に使用されていること、一般世人の間に極めて周知の事柄で、当庁においても顕著なところであるとし、また原告の商標は、「ラツキーパズル」全体の結合において顕著性があるとの原告の主張に対し、「パズル」は、商品の用途を表示する慣用の普通商品名称というべきものであるから、その名称は、本願指定商品の一種の名称を表示したものに過ぎず、原告の商標は、「LUCKY」(ラツキー)をその要部と認めざるを得ない。右商標がたとえ「ラツキーパズル」と称呼して取引される場合があつたにしても、単に「ラツキー」印と称呼して商品名称である「パズル」は、省略されて呼称される方が、商取引界の通念に照し、普通であるから、「ラツキー」の呼称及び観念を有するものと認められる。従つてこれと同一の称呼及び観念を有する引用の登録商標とは、互に類似するものであるとし、商標法第二条第一項第九号を適用し、原告の商標の登録は拒絶さるべきものだとしている。

三、しかしながら、右審決は、次の理由によつて違法である。

(一)  審決は、前述のように、「PUZZLE」(パズル)の文字は「考えもの的に工作された玩具及び遊戯具」について、その用途を表示する慣用の商品名称として普通に使用されておりこのことは、特許庁にも顕著なところであるとしているが、最近の商標公報に、「PUZZLE CAR」(昭和二十三年商標出願公告第二六三六号)、地理パズル(昭和二十四年同第一四六〇六号)、「PUZZLE TOYS CLUB」(昭和二十五年同第六八〇五号)の各商標を、その指定商品を「考えもの的に工作された玩具及び運動遊戯具」に限定することなく第六五類玩具及び運動遊戯具一般を指定商品として、公告していることに徴して見ても、「PUZZLE」の文字が、審決のいうように「考えもの的に工作されたもの」を表示する慣用の商品名称として普通に使用されていることが、特許庁において顕著であるとは認められず、右の説示は事実に反している。

(二)  右に掲げた「PUZZLE CAR」「地理パズル」及び、「PUZZLE TOYS CLUB」はそれぞれ全体の結合において始めて商標としての特別顕著性があり、「パズル」を省略した「CAR」、「地理」及び「TOYS CLUB」からは、到底本来の商品名を想起することはできず、すなわち「PUZZLE CAR」と「CAR」、「地理パズル」と「地理」、「TOYS CLUB」と「PUZZLE TOYS CLUB」とは、それぞれ別々の商品を想起せざるを得ない。そしてこのことは、「パズル」の文字が未だ特定の商品名称を表示するものとされていない証査である。

(三)  従来顕著性に軽重のない二部分からなる商標は、その一部分とは類似しないものとすることは、既往の審決例、判決例の一致して認めるところで、最近の特許庁における審査例に見るも、「富士ラツキー」(昭和二十四年商標出願公告第一七九三号)、「ラツキートウキヨウ」(同年同第一四六一三号)「ラツキーボール」(昭和二十三年同第二六四二号)、「ラツキーボーイ」(同年同第二六八〇号)、「PUCKY RROOF」(同年同第二六四八号)、「LUCKY STRIKE」(同年同第二六四七号)の各商標が、原審決の引用登録商標第三五一四〇〇号「LUCKY」(ラツキー)があるのにかかわらず、同一指定商品について公告された所以は、たとえ「ラツキー」又は「LUCKY」の文字がその一部にあつても、全体としては、類似しないと認定されたからに外ならない。

(四)  原告の商標「ラツキーパズル」は、(二)記載の理由で、その全体結合に顕著性があるものと見るのが穏当であるから、たとえその一部に「ラツキー」の文字があつても、右(三)記載の理由により、これとは類似しないとするのが定則であり、特許庁における審査方式でもある。

以上要約するに、審決は、「PUZZLE」の文字につき、実情に反する判断を下し、これを基礎に、原告の商標が登録を拒絶さるべきものとしたのは違法である。

第三、答弁

被告指定代理人は、主文同旨の判決を求め原告主張事実に対して、次のように述べた。

一、原告主張の請求原因一及び二の事実は争わない。

二、同三について、原告の出願商標「LUCKY PUZZLE」(ラツキーパズル)の英語を邦訳してみれば、指定商品との関係上「幸運パズル」即ち考えもの的に工作された幸運の玩具又は遊戯具に相当する表示に外ならない。従つて「LUCKY」(ラツキー)の部分は、いわゆる特別顕著の標識で、「PUZZLE」(パズル)の部分は指定商品の一名称にすぎないものといわざるを得ない。「PUZZLE」(パズル)の語に、「考えもの的に工作された各種のもの(玩具及び遊戯具が考えもの的に工作されたものをも含まれている。)であることは、辞書をひもとくまでもなく明らかで、しかも今日の社会常識としてそれは日本語と同様に、その商品の用途上一般に慣用する商品名称であると認むべきことは、昭和二十二年特許出願公告第一九二六号標識パズル、大正十五年実用新案出願公告第三一五二五号教育玩具によつても明白で、これらの証拠を以てすれば、右は当庁においても顕著な事実を断ずるの外はない。原告は「PUZZLE CAR」、「地理パズル」、「PUZZLE TOYS CLUB」の審査例を上げているが、右商標はいずれも登録されていないし、またよし登録されたとしても、瑕疵ある登録として、無効審判の請求理由となるものである。

また原告の出願商標は、審決の理由に説明してあるとおり、その要部は、「LUCKY」にあり、原告が(三)に引用した各商標が公告せられたとしても、上記の理由を覆すことはできない。

第四(証拠省略)

三、理  由

一、原告主張の請求原因一及び二の事実は、当事者間に争がない。

二、右認定によつて明らかであるように、原告の商標は、普通の活字体による英字の大文字ばかりで、「LUCKY PUZZLE」と横に記載し、その上部にはやはり左横書きで、「ラツキーパズル」と片仮名で記載された文字によつて構成されており、(甲第一号証商標登録願参照)また引用商標は、稍筆記体に近い英字で頭文字以外は小文字を用い、「Lucky」と横に記載し、その下部に左横書きで「ラツキー」と片仮名で記載された文字で構成されており、(乙第一号証登録第三五一四〇〇号商標公告参照)両者とも第六五類玩具及び運動遊戯具を指定商品としているものである。

三、審決は、原告の右商標は「LUCKY」(ラツキー)の部分を要部とし、「ラツキー」の称呼及び観念を有するものであると認定し、原告はこの点を非難しているから、その当否について判断するに、原告の商標の構成の一部をなす「PUZZLE」パズルの語は、和訳して、難問、謎、当惑等の意義の外に、「考え物、判じ物」の意義を有し、これが「思考と忍耐とを要する玩具又は遊戯具」の名称として広く使用されていることは、その成立に争のない乙第二号証の一、二によつても明らかであるばかりでなく、当裁判所にも顕著なところである。原告はその成立に争のない甲第二、三、四号証(原告の請求原因三の(一)に引用したもの)の公告例に基いて、右認定を非難しているが、右公告例の存在は、直ちに前記認定を覆すものではない。(なお、審決が「当庁に於ても顕著なところ」といつているのは、審決に関与した三名の審判官によつて構成される、合議体に取つて、顕著であるとの趣旨に解すべきである。)

して見れば、原告の商標は、その指定商品中前述の「思考と忍耐とを要する玩具又は遊戯具」以外の商品については、商品の誤認又は混同を生ぜしめる虞のあるものとして、これが登録をなし得ないものというべく、従つてこれが登録をなし得べき「思考と忍耐とを要する玩具又は遊戯具」についてこれを見れば、右「PUZZLE」パズルの語は、これを指す商品名称にすぎず、他の部分すなわち「LUCKY」ラツキーがその要部をなすものといわなければならない。

すなわち、原告の商標の要部は、引用商標と、その称呼及び観念を同一にするものであるから、右両商標は、類似の商標と判断される。

四、なお、原告は、原告の商標は右認定のように「LUCKY」ラツキー「PUZZLE」パズルの前後二部分に分割すべきではなく、全体結合してのみ顕著性があると主張し、その成立に争のない甲第五、六号証その他請求原因三の(三)に記載した公告例を引用しているが、右両部分が結合してのみ使用せられるべきものであるとの事実は、右引用例のみによつては、これを認めるに足りず、他にこれを認める証拠はない。

五、以上の理由により、審決は「PUZZLE」の文字について、実情に反する判断を下したとして、その取消を求める本訴請求はその理由がないからこれを棄却し、訴訟費用の負担について民事訴訟法第八十九条を適用して主文のように判決した。

(裁判官 小堀保 原増司 河原徳治)

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